弁護士等情報

日々悪日

 陰々滅々たる日が続く。展望を持てない、展望が開けない。
 地震から一年半も経つと、取り残されたのは、どうしようもない人達、力のない人達ばかりだ。彼らは、呻き声を漏らすだけで、社会に向かって声を上げようともしない。その力さえない人達だ。
 そして、私たち弁護士は、日々、その呻き声を聞いている。聞かされている。
 地震で、借家が壊れた。明け渡しの裁判を起こされた、中年の男達は立退料の額にブーブー文句をつけながらも、次の借家を見つけて勢いよく出て行った。
 八〇才過ぎの一人暮らしの老婆、生活保護受給者、病人、彼らが被告席に取り残されている。家賃は一万円台だ。そして、私たちが弁護する。
 家は随分壊れている。滅失の判断は出るかもしれない。いや、出そうだ。その時、彼らはどうするか、どうしようもないのではないか。私たちは、どうしたら良いのか。誰も教えてくれない。
 高齢者、低所得者、病人などと簡単に言うが、一人一人が、個性と感情を持っている。そして私たちは、彼らと接している。顔が浮かんでくる。視線がまとわりつく。私の精神が弱いせいもあるが、平静ではいられない。
 尼崎では、仮設住宅の空家が、一二〇戸余っている。彼らが、そこに入居できれば、問題はある程度片づく、仮設入居者は、災害公営住宅入居の一番切符を手に入れているからだ。しかし、尼崎市や県は、仮設の空屋募集をしようとはしない。なんということだ。
 仮設住宅に入れた人たちはまだしも幸せ者だ。仮設にも入れず、追い立てられ、行き場のない物言わぬ人達、そして生活保護以下の収入で暮らしている人達。問題はここにある。政治的行動が必要なのは、分かっている。私は、尼崎の市民会議の代表者の一人だ。しかし、それでは間に合わない。
 これ以上書く気になれない。
 近頃、眉間に縦皺が増えた。
 神戸の弁護士さんは、もっともっと辛かろう。

(平成8年6月記)