弁護士等情報

母に

2.桜

4月7日、午前11時、もう我慢ができない、今から桜を見に行くんだと立ち上がる。ワーッと事務員さんたちが声を上げる。 夙川の桜見物に出かけるのだ。アルバイト君を含めた事務員さん13人と私。他の弁護士さんたちはお仕事だ。

夙川に沿って、阪急夙川駅から阪急苦楽園口駅まで歩く。ワー、凄い、キレイ、綺麗、事務員さんたちは定型的嘆声を上げ拍手をしながら進む。 8分咲きというところか。途中、たこ焼きの屋台が出ている。屋台が出ているということはこのあたりの眺めがよろしいということだ。そこで、川端に腰を下ろし、お花見弁当を広げる。おいしい。事務員さんたちは、顔を上気させしゃべりまくり、お弁当をつつきお茶を飲み、桜の花を眺め回して歓声を上げている。 こんなによくしゃべる事務員さんたちだったのか。連れてきてよかったな。

この桜の花の見事さは、どうだ。なんという素晴らしい国に私たちは生まれて来たことか。

それにしても、大勢の人たちが歩いているな。幼い子、若い子、外人、中年、老人、これが男女に分類されていて、ひとりひとり服が違う。顔も顔色もまったく違うな。そして、一人びとりが満足して機嫌よく桜の花に顔を染めて、ゆっくり歩んでいく。桜の花は、人々の心の底を照らすのだろうな。

こんなにたくさんの人たちをしげしげ観察したのは何年ぶりだろうか、数えてみるがわからない、わかる筈がない、生まれて初めてだからだ。

目の前の桜の花たちは、何を考えているのだろう。通り過ぎてゆく人々が機嫌がよいので、満足しているのだろう。 御機嫌よう皆さん、喜んでいただいて嬉しかった、お会いできてよかった、生きてきてよかった、そう言って桜の花は散ってゆくのだろう。

亡くなった母のことを考え続けるのはもう止そう。
私が浮かない顔をしているのを母は好むまい。
別れを告げる時だ。

さようなら  母さん。
母さん もう一度 さようなら。

さようなら 桜の花たち。

(平成18年4月記)